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Renovate an RC shop

かつて酒造会社の代表が建築したというRC造邸宅を住居兼店舗へと改修したプロジェクトである。
敷地は山田錦を中心とした稲作が盛んな地域にあり、水田に囲まれ美しい田園風景が広がる一帯である。敷地面積500坪弱、延床1・2階合わせて130坪超の邸宅は、手をかけようと思えば際限なく改修するところがあり、外観の改修は開口部などの必要最小限とし内部空間を充実させることに注力した。設計で重要視したのは元々あった建築の空気感、空間的質を継承することである。

店舗部分は住宅であったかつての印象をセレクトショップとしての空間に変えるため、新旧の素材が混在した汎用性の高い空間構成とした。幅4.5m×高さ2.5mの特注スチールサッシを3組製作。解体時、印象的だったRC壁面は手を加えずそのまま残し、新設した住居部との間仕切り壁とカウンターには、左官職人が開発した特殊な樹脂をセメントに混入する新素材を採用した。外部の螺旋階段とスチールサッシは常温亜鉛めっき仕上げ、天然亜鉛の経年変化がお化粧のような表面的な装飾でなく、また新旧ではない本質的な風合いを求めた空間に合致した。

住居部分は4m×3.5mの中庭を中心に空間を構成した。玄関を開けると中庭の木々が目に入り、ぐるっと中庭を囲うようにキッチン、リビング、寝室、収納、水廻りへと続く。中庭には紅葉するモミジ、アオダモ、春や初夏に白い花を結実するコバノズイナ、シジミバナ、秋に実をつけるマルバシャリンバイなどが既存の石組み、吊り灯篭と合わせ植栽され、どこにいても季節の移ろいを身近に感じ取ることができる。左官職人と家具職人の協力により造作されたコの字型キッチンは複数人で調理場に立つことができ、料理とお酒を楽しむ依頼主の嗜好の場となるであろう。
住居部分の仕上げ素材には、既存RC壁、漆喰、モルタル、ラワン材を採用し、空間に入る陽光を体感しやすい材を選定した。日々の暮らしの中で、壁面に射す陽光や木々の変化により、時の流れや季節の移ろいを楽しむことができる豊かな空間に仕上がった。(黒木大亮)

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